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第13回 Milky Way,Faraway
~七夕伝説異聞~

エーテルコードのフライヤー
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【CAST】

神村風子
藤原亜紀乃(株式会社AVILLA)
たはらひろや(±0)
萩原悠(ジョイナス エンターテインメント)
綾部リサ(タッチアップエンターテインメント)
吉田実紀(ゼロイチファミリア)
鈴木大二郎
岳(劇団Q +)
佐野礼奈(プリュ)
杉山桜子
山田のぞみ
小口奈穂
根本まどか(FA-ZESエンターテイメント/La corolle)
藤澤まな
春摘らむ
逢坂美華
野木舞夏
山田貴之
(以上シングル)

《織り姫》
田代命
宍戸絵ミ子
松坂南(株式会社ジェミーロード)
Hiroka Denzy(POWER PROJECTクーデター)

《彦星》
若本諒平
海野香流
春野遼子(月ねこ座)
松本淳(シーグリーン)

【あらすじ】

売れない被服デザイナーの川原沙織は、かつて男に騙され、多額の借金を背負った。今は夜の仕事で生活費を稼ぎ、幼馴染みの蜷川星矢に人生相談や愚痴を聞いてもらっている。そんな沙織は親友の朱里から教えられた星占いの通り、夜の仕事を通して投資家の城島英樹と出会い、意気投合。星矢はこれを知り、沙織を求める自分の気持ちに戸惑う。星矢の気持ちに気付いた沙織の妹の飛鳥は2人の仲を取り持とうとするが、いつしか飛鳥の気持ちは星矢に傾く。
一方、天上界では年に一度しか夫のアルタイル(牽牛)と会えないベガ(織姫)が、天帝ゼウスが操る運命を変えようと、自らの意志で天の川を渡ろうとするが、それを助ける英雄ペルセウスに心を奪われてしまう。ベガとアルタイルの間を橋渡し役として行き来するデネブは、密かにアルタイルに心を寄せていた。
そんな天上では、占いを司る3人のニンフ(メライナ・クレオドーラ・ダフニス)が行う「人占い」が流行る。人と星とは同じ成分でできているため、自分と同じ成分を持つ人間の動きを見れば運命が分かるという。占いによれば、ベガはアルタイルとともに生活することなく、先に消えてしまうというのだ。それは地上の沙織の運命とも通じていた…。
恋人達の「夏の大三角関係」の行方は?
自分の進むべき道、愛する人、結ばれる相手は運命として決まっているのか?それとも、意志の力で変えることができるのか?

Milky Way,Faraway~七夕伝説異聞~
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【コメント】

萬劇場はFBI創設当初から、いつかは使ってみたい劇場の1つだった。そこで、満を持して公演を行うべく、前の公演から間を空け、この年はこの公演に全精力を傾けることにしたのである。とはいえ、前の公演の残務処理が長引いたこともあり、結局はバタバタになってしまった。体制としては、第11回、第12回本公演でメインキャストとして出演してくれていたひろやんことたはらひろや君が演出助手として付いてくれることがかなり前から決まっていたのだが、彼のことはやはりメインキャストとして起用することも考えていた。結果そうなったのだが、その他のキャストについてはかなり紆余曲折があった。
脚本については、上演時期(7月)と空間を考えて、割と早い段階で「七夕伝説」の上演を決めた。この作品の上演も悲願であった。ただし、劇場のキャパを考えるとキャストを増やす必要があることや、その時点で考えていることや時事的な要素を入れたいということもあり、骨組みは維持しつつも、結局は1から書き直しとなり、その分の時間を取られた。

今作のメインキャストは、ほぼ事務所所属組、つまりはオファーである。このところのFBIの路線を踏襲して、アイドルグループのメンバー・元メンバーがダブル主演となった。織り姫役の藤原さんが所属する恵比寿マスカッツは今がまさに旬のグループ。もう一人の主役の神村さんは元SIR(サンスポアイドルリポーター)5期の準グランプリである。なお、彼女は舞台4回目にして初主演であった。ちなみに、高校生役の佐野礼奈さんも同じくSIR出身者(7期)である。また、特筆すべきは出演者に藤原さん、佐野さんを含めて4人もグラビアの仕事をしている人がいたことだろうか。藤原さんはTBSテレビの「中居くん、決めて!」のレギュラーでもあり、メディア露出の多い人が多数出演した舞台としても記憶されることになるだろう。
その一方で、かなり昔から知っているのに初出演のDenzyさんは、POWER PROJECTクーデターという純粋な小劇場の劇団の主宰である。また岳君の劇団Q+は社会人劇団で、彼とまなちゃんこと藤澤さんは社会人である。こうしたごった煮状態、異文化交流のような舞台ができるのも、プロデュース公演ならではといっていい。勿論その分方向性や意識や方法論がバラバラになりがちで、苦労も大きいのだが、演助としてひろやんと、その補助であるまなちゃんが付いてくれたお陰でだいぶ助かった。ただ、今回も稽古に思うように人が揃わず、シーンによって稽古量に差が出てしまったのは反省点である。

そして、今作では本格的にダブルキャスト制を採用。同じ役を別の視点から掘り下げて作り上げていく面白さがあった。また、それに伴って、相手役のシングルキャストの演技のしかたが変わるのも興味深いものがあった。物語の印象が結構違ったのではないかと思う。ダブルとはいえ、田代君、若本君、海野さんは逆班では兵士として殺陣シーンを中心に出演した。自分の班の時も同じく兵士もやっていたので大変だったと思う。また、今作では初めて殺陣のアンサンブル専門キャストとして山田君に出演してもらった。殺陣の稽古では山田君、田代君が中心となり、初心者も多かった殺陣のレベルアップに努めてくれた。
その殺陣は、初めてTEAM怪賊船のMINAさんにお願いしたが、熱血指導で格好いい殺陣を付けて下さった。MINAさんはじめ快賊船さんには、キャスティング、小道具や衣裳に関しても多大なるご協力をいただき、芝居を全力で支えて下さったことに、本当に感謝している。
恒例のダンスシーンも1カ所あった。腰をやっているという杉山さんを何とか説得し、踊ってもらったものである。

稽古場の関係で、実寸をとって稽古することが殆どできなかったが、セットは高さも含めてよく考えられた素晴らしいもので、もっと活かせたかもしれないと悔やまれるほどだ。七夕ということで笹が登場するのだが、なんと本物が用いられた。(千穐楽に向かって少しずつ元気がなくなっていくのを、毎日水をやりながらもたせた。)FBI史上最も広い空間は、天上と地上や、別空間が同時進行する物語に説得力を与えた。天の川の濁流に登場人物達が翻弄されるクライマックスシーンは、この広さでなければ表現できなかったであろう。

役者陣もみな好演を見せた。亜紀ちゃんの安定感と運動能力の高さには目を見張るものがあったが、もう1人の主演のふうちゃんは、それまで振られることの多かった可愛らしさよりも「大人のお色気」が要求される場面(ベットシーン?)があり、これを見事にこなして新境地を開いた。彼女のファンにも好評だったようである。ひろやんは演助をやりながら主役の相手役をやるという大車輪の活躍で、そのリアルな演技が光った。亜紀ちゃんの相手役の萩原君は繊細な演技を見せた。稽古場でもシーンや役作りに関して積極的に提案してくれる姿勢が素晴らしく、大いに助けられた。およそ2年半ぶりとなるポンちゃんこと綾部さんは、前半の干物女ぶりと後半の小悪魔的な演技のギャップが印象的だった。
ダブルキャストで最も印象が異なったのはゼウスであろう。「織り姫」チームのDenzyさんは遊べるところは思い切り遊び、「下ネタ」をぶち込んだ(賛否両論あったが)。一方「彦星」チームの松本さんは、正統派の重厚な演技を披露。どちらも物語の「要」としての役割を十二分に果たしてくれた。高校生役の田代君と若本君も、ある意味対照的な役の作り方で、甲乙付けがたい「アオハル」な世界観を体現していた。(本当は全員について書きたいところだが、スペースに限りがあるので、残念だがこのあたりにしておく。)

この公演では、FBI初となる終演後の「チェキ会」を実施。こちらで体制を整えられなかったので、出演者が出演者を撮影するということで乗り切った。チェキ会の仕切りをみけちゃんこと吉田さんにお願いしたのだが、さすがに手慣れたものだった。お陰様で売れ行きも好調だったので、出演者の顔ぶれにもよるが、今後も取り入れていく予定である。

エンタメ要素がたっぷり入っていたこともあってか、お客様の評価も上々だった。(勿論、辛口・激辛のご意見もあった。)嬉しかったのは、たまたま特設サイトを見てこの公演を知り、岡山からはるばる見に来て下さった(上京するタイミングと合ったこともラッキーだったが)お客様がいたことである。「見てよかった」とアンケートにも書いて下さった。こういうお客様を1人でも多く獲得できるように、今後もいい舞台を作り続けていかなくてはと決意した次第である。

そして、この公演では、何と言っても前述「中居くん、決めて!」のサプライズ企画が行われたことが大きな出来事だった。もともとは番組中にMCのサンドウィッチマンさんが、亜紀ちゃんの「(舞台を)見にきて下さい」とのリクエストに対して「行きます」と答えたところから始まっていた。2日目のソワレに、彼女をはじめ出演者には内緒で、サンドウィッチマンさんに、着ぐるみを着て終演後のカーテンコールに紛れ込んでもらったのだ。ネタバラシの瞬間、会場はヒートアップ。亜紀ちゃんも「まさか本当に来てくれるなんて…」と大感激だった。この模様はこの年の10月にオンエアされた。サンドウィッチマンさんからはスタンド花も出していただいて、僕も感激だった。FBIの公演がメディアと繋がったことを象徴するような出来事で、エンターテインメントに徹した内容や出演者の顔ぶれとともに、FBIのメジャー化に道を開くような、非常に印象的な公演となった。

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