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Noisy Galley

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Noisy Galley(番外Vol.1)

2005年10月29日・30日 アーティストガーデン

【 作・演出 】息吹肇
【 CAST 】

  • 雨宮有紀:座喜味直子
  • 相良夏美:みむらえいこ
  • 保志泉:三浦彩花

あらすじ

個展を開くと友人に宣言しながら結局開けなかったOL・有紀。そうとは知らず、個展の予定日当日に画廊に押しかけた有紀の友人で編集者の夏美は、有紀を喜ばせようと、たまたま画廊にいた一人の女・泉を有紀の絵のファンに仕立て上げ、有紀に画廊に飾られた一枚の絵の内容を説明しろと迫る。困った有紀は、二人の前で、口から出任せで一つの物語をでっち上げるが、実は泉はその絵を描いた張本人だった。

コメント

初めて劇場以外、それも「画廊」というあまり例のない場所で打った公演である。

 これは、息吹と仕事上の関係があったイラストレータの本橋靖昭さんが、仲間とアーティストガーデンという画廊を借り切り、‘ソレタ大文化祭’というイベントを開催しようと企画。その催し物の一つとして、息吹に演劇上演のオファーがかかったというわけである。

 「番外公演」としたのは運営主体がFBIではないためだが、そのような形式の公演も始めてであった。本橋さんと制作のかずかすこと岡野さんは、いろいろな調整に走ることになった。

 今回は画廊公演ということで、「絵」を芝居の中に取り入れたのだが、ソレタのために出品したイラストを芝居で使用することを快く許可して下さったのが野沢まりこさん。そして、そのイラストを芝居用に拡大するのを、普段息吹が仕事をお願いしている出力センターに会社経由で依頼した。また、アーティストガーデンの岡本さんには、画廊としてはイレギュラーな使用の仕方故に、様々な便宜を図っていただくことになった。これまで芝居とは縁もゆかりもなかった(それも、どちらかというと仕事絡みの)人達の協力で作られた公演ということができる。

 チケプレや折り込みを使って宣伝した前回とうって変わって、客席数が極端に限られる今回の公演では宣伝らしき宣伝はHPとDM等役者の「営業」のみ。それでも3階の公演全てが満席で立ち見も数人ずつ出るという盛況となった。

 役者は、今回初めて全員が顔見知りというメンバーになった。ただし、これは偶然の産物で、泉役に内定していた女優さんがNGになったため、急遽彩花さんにお願いしたものである。元TPPCの2人はFBI初登場(彩花さんは「Stand Alone」で声だけ参加している)で、座喜味さんとは初共演である。また、みむらさんと彩花さんは劇団解散後初の舞台出演となった。

 稽古初日には脚本が脱稿しているという「Sweet Dreams」以来の快挙を成し遂げる。3人という少人数の割にはなかなか時間が合わず、全員揃っての稽古が限られたため、練り切れていないシーンもあったが、上演時間が短いこともあって終盤の追い込みで何とか作
り上げた。因みに、出演者中稽古場一番乗りが最も多かったのは、多分みむらさんであろう。

 元TPPCの2人にとっては、等身大の人間の役は初めてのため少なからぬ戸惑いがあったようで、「等身大の女性ってどんなだっけ?」「衣装で稽古場に来られるなんてあり得ない」と言い合ったという。座喜味さんは衣装のイメージが最後まで固まらなかったが、
3人のうちでは最も「当て書き」されたと言われた役であった。事実、彼女が演じた有紀は、座喜味さんの存在が生み出した役という側面が強い。

 また、この芝居で初めて客いじりに挑戦。これを毎回客いじりがあるTPPCでも担当したことがなかったというみむらさんがすることになった。何ともシュールな設定のいじり方に、場内に表現しがたい雰囲気が漂った。

 慣れない空間で役者もお客さんも緊張した感じだったが、予想以上に芝居がその空間とマッチしたためか、概ね好評を博した。役者は3人それぞれの個性が光り、バランスがよいと評された。特に、F2C2公演以来となるコミカルな役を演じた座喜味さんは、ほぼ一人舞台となる‘野田噺’のシーンなどが強烈で、「生き生きしていた」と言われた。

 「Stand Alone」の出演者から「肇さんのコメディは想像がつかなかったが、見て納得した」と言われたが、僕自身これ程明るいトーンの作品はあまり経験がない。しかしやってみると面白く、この方向性もありかなと思う。小公演ながら新しい発見も多く、充実したものとなった。僕にとってある種のターニングポイントとなる可能性のある芝居で、その意味でも忘れられない公演である。