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羅城の蜘蛛

ホーム>作品>羅城の蜘蛛( 演劇ユニットELEGY KING STORE)

羅城の蜘蛛

EREGY KING STORE公演 2012年2月2日~5日 TACCS1179

演出:息吹肇
制作総指揮:伊智生士冶

《CAST》
渡辺綱:仲村水希((株)ぷろだくしょんバオバブ)
酒出羅紋[酒顛]:伊智生士冶(EKS)
桂[茨木童子]:久保田真由美
菖蒲[朝霧]:岩崎絵里(スターダス・21)
藤原保輔:橋本仁(スパーツ・プロデュース)
唐吉[唐熊]:綿屋十目治(THEちょんまげ軍団SUPER)
寅次[虎熊]:藤田秀和(アルカディア)
惺正[星熊]:津村英哲(スターダス・21)
鈴[金熊]:松山由紀子(EKS)
源頼光:五十嵐勝平(株式会社スタイルキューブ)
坂田金時:笈川勉(マインズエンタテインメント)
碓井貞光:山本常文(思誠館道場)
卜部季武:田口善央
風渡お竜:鳥越夕幾子(EKS)
藤原道長:あべそういち(EKS)
帝(一条天皇):加藤敦洋(劇団ギルド)
安倍晴明:戸田慎吾((株)T’sナインハーフ)
紫式部:平田絵里子(EKS/アクセント)
アンサンブル:井生忠孝/山崎剛芳/鳥谷結貴/今井英二/辻政樹/柳川典久

コメント

 この芝居は、演劇ユニットELEGY KING STOREという団体が、次回公演の脚本家を探しているのをmixiで知り、コンタクトをとったことから始まった。
 自分のユニットとは違い、集団側で物語の素材と大まかな骨格を決め、その後は主宰の伊智さんと僕がSkypeで遣り取りしながらプロットを固め、僕が台詞に起こして伊智さんがそこに手を加える、という手法で脚本が作られた。したがって、厳密な意味で僕の「完全オリジナル」とは言えないかも知れない。実際、これを見たかつて僕の芝居に出演した役者が、
「作風変わりました?」
と訊いてきたくらいである。

 僕にとっては初の時代劇(時代考証にはこだわらないとは言われたが)の脚本であった。しかも、時代があまり馴染みのない平安だったので、泥縄式に本を読んで勉強し、あとはこれまで見た時代劇の台詞やシーンを参考にしながら書いたものである。また、メインの登場人物が18人と大人数で、その大半が男というのも極めて異例であった。ついでにいえば、他の団体を演出するのも初めて。本当に今から思えば全てが初挑戦の舞台だった。

 いつもの如く、脚本執筆と稽古が重なる事態になった。プロット通りに書き進めたところ、3時間弱の長編になってしまい、役者も一緒になって、寄ってたかって苦労の末カットしたが、それでも2時間を超える作品になった。
また、この芝居の見せ所の一つは殺陣であったが、これはかなり本格的なものとなり、かつ何カ所も入るので、当然のように殺陣稽古が毎回設定されたが、キャストの多さから毎回欠席者が出る事態になり、その度に代役が立てられ、役者はかなり苦労したと思う。因みに殺陣をやると、役者は
「他人の手は覚えられるが、自分の手は入らない」
という状態になるそうである。

 出来上がった芝居は、エンターテインメント色が強いものとなり、評判は上々。これまで僕が関わった芝居の中でも、恐らく一番よかったのではないかと思う。男臭い芝居の中に女優だけのシーンを入れたりして、僕らしさを少し出した。また、ラスト近くでは女性が‘キュン’とするシーンも入り、まさに悲劇的な結末ということも相まって、客席では涙ぐむ人が続出した。
また、
「この手の芝居では殺陣シーンがメインになりがちだが、人間ドラマもきちんと描かれていてよかった」
といった評価や、追加公演や地方公演、さらに広い劇場での公演を求める意見など、嬉しい反響が続々寄せられた。僕の芝居をずっと見てきた友人達も
「これまでで一番面白かった」
と言ってくれた。
勿論、否定的な意見も散見されたが、全体としては「大絶賛」されたといっても過言ではない。

 なお、役者にイケメン、キレイ系、カワイイ系が多かったのもこの舞台の特徴である。また、
「全員がはまり役」
とも言われた。「当て書き」をしたと思った人も多かったようだが、僕自身は役者選びにはノータッチだったので、少なくとも前半部分は役者を知らずに書いていたのである。

 かなり壮大なエンターテインメント作品を、共同作業で作ったというのが実感としてある。その過程は産みの苦しみに満ちたもので、時に稽古場が混乱状態になったりもしたが、何とか皆の力で形にした舞台である。
いろいろと紆余曲折はあったが、出来上がったものを見れば、ある種の金字塔を打ち立てたようなものである。皆それぞれに苦労はあったと思うが、この芝居に関われたことは胸を張っていいことだと、僕は思っている。