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ギャラクシーベビーはGO!!

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ギャラクシーベビーはGO!!(開店花火)

~観劇日・劇場

2002年12月15日 アイピット目白

~作・演出・出演

  • 作・演出/平田侑也
  • 出演/平田侑也・和田ヨシヒロ・棚鰭太地・堀口大介・田中伸一・小松寛子・松尾美香・浅田直美・谷口恵美・瀬戸山薫・夕起ゆきお・徳元直子 他

感想

ハートハートハートハートハート

ギャラクシーベビーはGO!!開店花火は旗揚げして2年という若い劇団である。毎回主宰の平田のオリジナル作品を上演して今回が5回目の公演だが、動員も着実に増えているようだし、オーディションでメンバーーを募ったり客演を呼んだりして毎回結構な賑やかな公演をしているようだ。なかなかに勢いのある劇団である。今回はキャスト数が19人!さすがに劇団始まって以来の多さであるという。
 内容は、平田の自伝的な要素にフィクションを交えたものである。このところ素行が悪くなっている高校生の平田は、2学期の終業式前日、ついに暴力沙汰で警察のご厄介になった。母親は大いに嘆くが、平田は意に介さない。平田の友人・和田と太地は平田と同じく家庭が崩壊状態。家に帰れずに平田の家に泊まっている。彼等はバイト代を貯めて、3人で部屋を借りようと計画している。和田の弟・大介も押しかける。また、平田の家には、ボクサーである兄・伸一とその恋人・小松が同棲している。平田の妹・恵美(谷口)は兄に本気で恋している。平田の終業式当日の夜中、友人2人が泊まっている平田の部屋に宇宙人が現れ、彼等に一つの丸い玉を預けていく。平田達3人にはそれが「宇宙人の赤ちゃん」だと思い、次の日からおしめを買えたりミルクをやったりベビーカーを買ったりと大忙し。そんな3人に周囲は戸惑う。
 全作「ジャングル事務」と同様、漫画チックなハートウォーミングコメディである。出演者は全員個性豊かで、ふんだんにあるギャグのシーンも見ていて楽しい。個人的にいうと、平田の母を演じた浅田直美という女優さんが、前回お手伝いさんだったとは思えない程のはまり役。息子とぶつかり合いながらも愛情を注ぐ肝っ玉母さんぶりを見事なまでによく表現していた。その役者陣平田を訪れる元彼女と、復縁を阻止しようとする恵美と友達チームとのバトルとか、平田が前に所属していた怪しいビジュアル系バンド・まぐろジェンヌが平田の復帰を求めてくる話、また小松を巡って兄弟間、そして太一を巻き込んでのボクシング対決、宇宙人を呼ぼうとする和田の父が所属する怪しい集団等、エピソードがいくつか盛り込まれている。しかし、全体として見ると、各エピソードが「ギャラクシーベビー」に収斂していかないので、見ていてやや散漫な印象を受けてしまう。また、登場人物が多いために、主人公の平田とその母親以外は人物の書き込みが甘くなった。その分話に奥行きが生まれない。宇宙人の設定といい、どこまでも「コミック」を読んでいるような感じのぬぐえない作品である。今回は平田が脚本執筆中に健康を害して倒れてしまったことが大きく影響しているのかも知れない。
 マグロジェンヌの4人のコンビネーションといい、個々の人物やエピソードのアイディアは面白いし、何より役者が魅力的かつ実力があるので、安心して見ていられるのは事実だし、この劇団の長所だと思う。それだけに、次回モリエールでの公演は脚本的にも完成度を上げてビシッと締まった舞台を見せてほしいものである。