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狐と狸のゆびきりげんまん

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狐と狸のゆびきりげんまん(仮)

~観劇日・劇場

2003年11月30日 アトリエだるま座

~作・演出・出演

  • 作/垣根晋作
  • 演出/清元珠和
  • 出演/浦治徳・頼近樹和・濱田朋行・大窪麻衣・水輝みこ・原のぶひろ

感想

ハートハートハートハートハート

狐と狸のゆびきりげんまん最初に断っておくが、劇団名は正式名である。BBSを通じて知り合ったmicoさんこと水輝の出演する芝居だということで見に行った。当日は前の予定が押してしまい、何と開演後30分を経過してからの観劇となった。しかし、それでも2時間あまり。長い部類の芝居である。
 ということで、ストーリーも最初の30分が分からないままであった。しかし、おそらくこういうことであろう。ある地方の村が、高速道路の建設で廃村になってしまうことが決まった。何とか村を守ろうとする数少ない若手村民の荒岩(濱田)と西村(下浦)、そしてその後輩の坂本(水輝)は、村の出世頭で、東大卒業後に東京で大手商社の営業職に就いているという佐藤(頼近)を呼び、集会を開くことを思い付く。佐藤は部下と名乗る女性・高見(大窪)を伴って現れる。その出世ぶり驚く西村達。集会は成功したかに見えたが、実は佐藤の出世は全くの嘘だった。佐藤は東京で受験に失敗。フリーターをしていて、高見はそのバイト仲間だったのだ。そして、嘘に嘘を重ねた結果、故郷に帰るに帰れなくなっていたのである。集会の終了後、別の部屋で佐藤と高見の話を聞いて真実を知ってしまった坂本は、このことを西村に告げるべきかどうか迷う。そんな中、集会の主催者である荒岩が会場内で殴打され、意識不明になる事件が発生。荒岩の手に握られてい知恵の輪の片割れを手懸かりに、刑事・掟(原)が取り調べを進めていくうちに、それぞれが持っていた「秘密」と、荒岩襲撃の真犯人が明らかになる。
 先にも書いたが、ストーリーの割に長い脚本である。前半の30分を見なくても何となく話が分かってしまうくらいだから、もっと端折れる部分はあっただろう。「回想」の形で同じシーンを2度繰り返す手法は面白いが、その分他を削ってコンパクトにした方が、後の方のエピソードが生きるし、「指切りげんまん」ももっと感動的に見せられた筈である。また、舞台装置に疑問が残る。上手と下手に襖がある部屋のセットを組んでおり、ここが会場の控え室や和室、佐藤の東京の部屋、そして警察の取調室にもなる。しかし、どの部屋の入り口も襖というのはどう考えてもおかしい。つまり、「襖」が具体物過ぎて邪魔になってしまうのだ。いっそのこと何もない空間で最低限の装置(椅子など)を使った方がよかったかも知れない。
 役者は全体的に演技が固い。それが、本来は笑える筈のシーンでも笑えないことにもつながった。下浦は声の張りは見事だが、メリハリが少なく一本調子の印象を受ける。濱田は癖の強い台詞回しと演技で見づらく、やはりメリハリがないので喜怒哀楽が分かりにくい。掟は演技が固く、頼近は自然体に近いが、嘘をついている時と本当の自分の姿の差をもっと見せてほしかった。これは全員に言えることかも知れないが、それをきちんと見えないと、「狐と狸」という構造を浮かび上がらせ、そのことで「本当の思いは一つ」というラストを際立たせることは難しくなる。水輝は自然な演技で好感が持てるが、滑舌が甘くなって台詞が聞き取りづらいことが度々あったのが残念だ。最も癖がなく見やすい演技をしていたのは大窪だ。小柄で細身の大窪が大柄の頼近や濱田に啖呵を切るシーンは、見ていて微笑ましく、また小気味よい。
 作品全体としてもメリハリに乏しく、また不要とも思える暗転があったりして、消化不良という感じだった。台詞やシーンをもう少し整理すればよくなるだろう。また、役者はもっと自然で力を抜いた演技をするのがこの作品には相応しいと思う。
 いずれにしても、まだ若い集団だ。今後の成長に期待したい。