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今度は愛妻家

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今度は愛妻家(サードステージ)

~観劇日・劇場

2002年11月23日 俳優座劇場

~作・演出・出演


  • 出演/ 池田成志・長野里美

感想

ハートハートハートハートハート

この脚本家の出世作?ポッカポカシリーズを残念ながら僕は見ていない。ただ、放映当時周りにファンが多かったので、気にはなっていた。その後サードステージプロデュースでも何本かやっていたが、どれも見る機会を逸してしまっていた。したがって、今回が初見参であった。また、大好きだった第三舞台が活動を休止してしまったので、長野さんや池田さんなどサードステージの役者を見られる機会でもあり、その意味でも期待をして劇場に足を運んだ。
 6年の交際を経て結婚し、今は倦怠期を迎えた北見夫妻(池田・長野)の家を舞台に、カメラマンである北見の弟子の古田(横塚)、北見が妻の留守中に家に連れ込んだ女優志望の若い女・蘭子(真木)、そして北見家に出入りする謎のおかま?・文ちゃん(高橋)が織りなす、ちょっとほろりとさせるコメディである。
 やはり映像出身の脚本家だけに、北見夫妻の関係を象徴する人参ジュースやカメラといったアイテム(小道具)の扱いがうまいと感じた。また、テレビや映画では渋い脇役というイメージの高橋におかまという意表をついた設定も、無理なく受け容れられるように作られている。ラスト近くになって、実は長野演じる妻が、結婚1年目の沖縄旅行(それは2人の新婚旅行先でもある)で事故死していたことが明らかになることで、「今度は愛妻家」の「今度は」の意味が分かるという仕掛けもきいている。つまり、脚本的には破綻がない。それが逆に、こぢんまりとまとまってしまった印象を受ける。確かに笑えて泣けるのだが、強烈な印象を受ける忘れられない舞台というわけではない。良くも悪くも、「良質なエンターテインメント」という感じだった。
 ただ、役者の個性は生かされていて、それが「ささやかな人間ドラマ」をちゃんと見せてくれた。妻の亡霊(幻覚?)と会話し続ける池田の演技には説得力があったし、長野のコミカルな可愛らしさのある存在感も芝居のポイントとなった。
 今回僕のツボにはまったのは、蘭子の真木である。ルックス・スタイルの良さは勿論だが、それに溺れない体当たりの演技で、孤独と不安と焦りを抱えながらも虚勢を張り続ける女性の心理を表現していた。演技がやや一本調子なのは気になるが、それを補う華があった。今後のさらなる活躍を期待したい。
 いろいろ書いたが、日常に疲れた人の傷口に塗り薬を塗り込むような効果がある舞台だったと思う。