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C2- Reading vol.3「レイン」

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C2- Reading vol.3「レイン」

~観劇日・劇場

2009年5月31日 ateliea DingDong

~作・演出・出演

演目;~詩~『空の涙』(空色)/『心雨。』(中山志乃)/『レイン』(にわかとも)/『雨と無知』(端)/『雨が連れてくる』(ふたば)/『夕立のうちに』(ふたば) ~小説~『雨の日』(沖田流胡)/『花嫁』(片岡弓子)/『空水<そらみず>』(佐藤智也)/『待ち人』(中嶋亜由美)/『待ち人来たりて雨はやみ。』(端) ~朗読劇~『約束』(にわかとも) ~語り(オープニング・エンディング)~『雨が降る』 ~ダンス~『rainy day』/『雫』/『wish』

  • 演出~構成/やすを(改)
  • 出演/松山コウ(CreativeConfiguration)~窪田智美(CreativeConfiguration)~岸俊広(演劇集団若人)~林麻衣子(劇団あいすきゃんでぃ)~荒谷弥生~結城響
  • Dance:高橋利咲子(BLAZE)~岡本明日香(BLAZE)~高橋良美(BLAZE)~皆川恵里佳(BLAZE)
  • ピアノ:渡辺奈都

感想

ハートハートハートハートハート

C2- Reading vol.3「レイン」CreativeConfiguration(以下C2)は演劇ユニットだが、今年は隔月でリーディングを行っていくそうである。
 僕はvol.2を見損なったので、今回が2回目だ。今回のテーマは季節柄『レイン』。僕が見に行った日は、まさに雨がそぼ降る千秋楽であった。
 なお、C2は前月に舞台版『レイン』を上演しているが、僕は見ていないため、このリーディングとの関係性は分からない。

 場所は、普段はアコースティック系のライブハウスとして使用されている所であろうか。
 この集団はメンバーが客を出迎え、客席へと誘導する。アットホームだが、ちょっと気恥ずかしい。なお、無料でワンドリンクが付く。
 舞台には端にキーボードが置いてあり、雨をイメージした装飾(吊りもの)が控えめにされているが、それ以外は何もない。必要に応じて椅子が出てくるくらいだ。

 オープニングに語り「雨が降る」が松山によって語られる。いい感じの滑り出しである。
 続いて(BLAZE)によるダンス。意外とテンポの速いものだ。「雨の精」を意識したような衣装を着ている。

 それから、全員による詩の朗読がある。
 全員を平面に一直線に並べているが、ちょっと勿体ない気がする。それぞれ微妙に向きを変えて立たせたり、座らせたりすると、立体感が出ていいかもしれないと思った。
 ただ、全員が読むテキストの表紙は、青空に立体的な雲が浮かんでいるようなデザインで、これは凝っている。
 全員で読んだり、代わる代わる読んだりと、読み方には変化を持たせていただけに、構図的にも工夫してもよかったのではないかと思う。

 その後は、ときにキーボードの演奏に乗せて、様々な詩や物語が1人1人の役者によって語られていくのだが、テイストは結構バラエティに富んでいた。
 とはいえ、雨を擬人化した絵本のようなものや、詩人を主人公にしたもの等、全体的にファンタジックなものが多かった印象がある。題材が『レイン』(雨)だからだろうか。それとも、それがC2のカラーなのだろうか。

 それにしても、よくこれだけ様々な作品が集まったものである。これは凄いと思う。
 一つ一つの作品に関する感想の詳細は割愛する。
 というか、結構数があるので、なかなか一つ一つの印象を定着させるのが難しい。
 それぞれの役者の読み方にも癖がある。やたら甲高い人がいるかと思えば、落ち着いた人もいる。様々な個性が見られて面白いが、詩にしても小説にしても基本的にはモノローグとなり、読み手の「声」による表現力に全てが委ねられる。最初に違和感を持ってしまうと、それをずっと引きずってしまう。
 そのあたりがリーディングの難しいところだ。

 また、ダンスの入れ方もよく分からなかった。
 基本的には、オープニングと「詩」のパートの間、「詩」「小説」と「朗読劇」の間、そしてエンディングと入るのだが、本編とあまり連動しているように見えないところがちょっと辛い。タイトルこそ「rainy day」「雫」となっているが、本編がオムニバスなだけにテーマを絡ませることも難しく、転換以上の意味を僕は見いだせなかった。読まれる詩や小説に通底する「レイン」という以上のもう一段深い部分を身体化できるとさらによかったのではないか。

 その中で一番印象的だったのは、やはりC2の2人(松山、窪田)のよる朗読劇『約束』である。
 2人がそれぞれ役を割り振られて読むこともあるが、一番雰囲気が出ていた。
 内容的にも、一本の木や、男が持っていた傘といった象徴的な「小道具」が利いていて、言葉に無駄がなく、「雨」も効果的に取り入れられていた。
 C2の1人、にわかともの作だが、この人は本当に繊細な物語を紡ぎ出す。
 読み手の2人も、抑制のきいた語りが奏功し、観客(聞き手)に無理なく物語を浸透させることができていたように思う。

 この物語の余韻が残っているときにエンディングの語りが入るのは大変効果的だが、その後のダンスが「wish」なのはよく分からない。
 『約束』は切ない物語だったし、「雨が降る」もさほど明るい内容でもない。
 ここは、ダンスを入れるにしても、もっと静かに終わるのが王道だと思うのだが。
 演奏とリーディングがかみ合っていただけに、全体としてどうにもダンスが浮いている印象を持ってしまった。

 また、細かいことだが、背景にももう少し気を配って欲しかった。
 舞台も壁も黒が基調の空間なのだが、袖幕が赤なのである。
 これは小屋に備え付けのものだろうが、黒幕で隠した方がよかったと思う。
 せっかくの「雨」の吊りものを殺してしまっていた。
 これ自体いるのかどうかという疑問もあるが、どうせ飾るなら、キーボードも何かやって欲しかった。
 場所の制約があるのだろうが、中途半端になるのなら、何も飾らない方がよい。
 「雨」は、聞き手1人1人の頭の中に見えればよいのだ。

 C2リーディングはまだ3回目。
 手探りで方向性を試行錯誤している段階だと思う。
 詩や小説の並べ方(選び方)も、もう一ひねりあってもいい。
 しかし、意欲的な取り組みであることは間違いない。今後のさらなる進化を期待したい。