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射我懐石

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射我懐石

~観劇日・劇場

2006年1月29日 RED-Zone

~作・演出・出演

  • 企画・構成/小林未郁
  • 出演/
    《 歌調理 》小林未郁
    《 殺陣調理 》島口哲朗(劔伎衆かむゐ)・福田高士(劔伎衆かむゐ)・松尾美香(開店花火)・吉沢キヨ
    《 ダンス調理 》迷彩
    《 音調理/我ノ道 》g:周 b:バーヤン西村 dr:コンチ
    《 活弁 》山田広野

感想

ハートハートハートハートハート

大塚のライブハウスを使ったイベントである。最近比較的よく見受けられるバンドと芝居などのパフォーマンスのジョイントという形式だ。
 まずは、迷彩という不茶利組のパフォーマーと小林の歌、そしてバンドのジョイントである。一発目の小林の歌声に魅了される。不安感を煽るようなメロディラインと、迷彩の無表情な人形振りがよくマッチしている。
 続いて、かむゐによる殺陣。バンドの生演奏に合わせて、力強くスピーディな動きだ。ロックビートに乗せた殺陣は悪くない。4人それぞれに見せ場を作りながら、男衆2人と女衆2人が切り結ぶ。最後は、小林が入っての殺陣になる。細身ながらよく映える姿だ。
 活弁士?山田のゆったりとして惚けたトークに続いて、突然始まるのは「魔ノ森」と題されたパフォーマンス。迷彩の2人と殺陣が絡む。ダンサーがゾンビのように動き、剣士を襲って殺してしまう。そして、彼等をゾンビにして、さらに剣士の仲間を襲うという筋立てだ。無機的な動きのダンサーが不気味さを醸し出すという趣向だろうが、ここでの2人の動きはやや曖昧さが残った。シーンとしての雰囲気は悪くない。
 固くなった会場の雰囲気を和らげるように、山田の活弁による自監督作品「僕の陰陽師」。短編の無声映画で、内容は至ってチープかつナンセンス。客席から思わず笑いが漏れる。
 打ってかわって、かむゐの島口と松尾による「桜花心中」。切なげな小林のキーボード弾き語りに乗せて、男と女の心中物語が展開する。死に損なった男を、哀れみと恨みのこもった目で見つめる松尾は、開店花火の舞台とは全く違った顔を見せる。儚げな存在感で見せたが、傘がはらりと動いて登場する(化けて出る)シーンでは、もう少し妖しさが欲しいところだ。
 そして、このイベントを仕切る小林の弾き語りで3曲。普通のライブならここから始まるところだ。少しハスキーになった声が、かえって歌の表情を豊かにする。伸びやかで、艶っぽい歌声だ。個人的には、1曲目の「刻印№2」と2曲目の「せむし男の恋」が好みである。
 フィナーレは全員で、小林の歌「知ラナイ光」で盛り上がる。
 1時間半にも満たない時間の中に、いろいろな内容を盛り込んで、なかなか楽しめるイベントだった。全体に漂う「アングラ」な「暗い輝き」とでもいう雰囲気が何ともいい感じだ。また、照明が美しく、会場と演目にマッチしていた。
 懐石料理になぞらえた構成もなかなかうまいが、個人的には、小林の歌をさらに前面に出した構成にしていってもいいのではと思った(歌謡ショーのようになっては元も子もないが)。好評につき再演もしたらしいが、キャッチーなことに囚われずに自分達の色を貫いているこうしたイベントを行っている彼等には、本当に敬意を表する。この流れをさらに発展させていって欲しい。機会があったらまた見に行きたいと思し、個人的にも色が近いので、いつか絡んでみたいとも思ったのだった。