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Stairway to Heaven

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ガラスの靴を脱ぎ捨てて

純粋芝居 1989年

3月31日 スタジオ赤坂プレイBOX
【作・演出】息吹肇
【CAST】

  • 吉野舞/石川マリ:野原正美
  • 星野哲也:根岸英之
  • 大島圭子:高橋潤佳
  • 倉本茂:三露哲司
  • 時空戦士スピルバン:進藤温也
  • 現実破壊工作員5032号:佐藤弘之
  • 現実破壊工作員5033号:河辺博子
  • 二十四次元帝国皇帝:柿沼直樹

コメント

僕が戯曲を書き始めたのは、出身高校の演劇部の地区発表会用に書き下ろしたことがきっかけだった(『プロメテウスの炎』参照)。それ以降ほぼ一貫して演劇部向けに書いてきたが、人数の関係や部員の好み等の事情から、その後全く採用されなかった。それではというので自前の集団を作って打った初めての公演である。とはいえ、当時から「劇団」を作るという思想はなくて、1本の芝居を作るためにメンバーを集めるといういわばプロデュース形式をとったのである。大学で劇研に所属していなかった僕は、高校の演劇部OBの後輩と大学の映像サークルの同期出身者に声をかけ、にわか作りの集団でこの芝居を作った。
 半年前から書いていた別の脚本が行き詰まり、期限が迫る中慌てて書いたのがこの脚本。当然稽古初日には間に合わず、立ち稽古と脚本書きが同時並行するというプロの気分を味わう。とにかく何もかもが初めてで、今にして思えば、芝居を作るということがどういうことなのか、そのためには何が必要かということが全く分かっていなかった。正味一ヶ月の稽古期間でドタバタと作ったため、特に役者にとっては恐怖の公演となってしまったようだ。本番中どうしても必要なある台詞がとんで、急遽脚本にないシーンをはさんで辻褄を合わせるというアクロバットをやってのけたりもした。それでも役者の力業で何とか乗り切れたのである。
 初顔合わせの割には役者のアンサンブルもよく、苦しい中にも和気あいあいとした雰囲気で作ることができた。たった一晩の舞台でいろいろと悔いも残るが、僕にとっては勉強になることの多かった忘れられない公演である。