Favorite Banana Indians

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癒されない女

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癒されない女(2011年)

ワニズホールふたり芝居参加作品

【 作・演出 】息吹肇(Favorite Banana Indians)
【 出演 】崎本実弥・渡辺京(Xidea)
【 振り付け 】マーガレット(イゴールのお部屋)

DVD販売中

あらすじ

癒されない女あるOLは「癒し系ロボット」を購入し、自分の部屋でルームメイトのように暮らす。ある時、あまりにも辛かったので愚痴を連発していると、ロボットの「究極の癒し」プログラムが作動して、彼女はロボットに絞殺されてしまう。



コメント

 もともとこの舞台は、前年に予定していた公演を病気のため流し、その病が癒えて間もない僕が、比較的気軽に芝居に関わる機会がないかと探していたところ、演劇仲間のマーガレットさん(『イゴールのお部屋』)が「こんなものがあるよ」と見付けてきてくれた、新中野ワニズホールというライブハウスの「ふたり芝居」というシリーズものの企画公演に端を発する。
基本的には「上演時間30分以内のふたり芝居の脚本募集」ということだったので、『レコンキスタ』から単独公演の実績もある「癒されない女(ひと)」を選び、登場人物を2人に書き直してホールに提出した。
最初は僕が関わらずに上演してもらうつもりだったが、脚本を読んだライブハウスの小屋主さんから、
「現時点でこの脚本を演じられる役者が見つからないし、自分が演出できる自信もない。上演は暫く待って欲しい」
と事実上の棚上げとも取れる回答をいただいた。

 これを僕がブログ上でぼやいたところ、「幻の2011年公演」の出演者オーディションで知り合ったもっさんこと崎本さんが
「私やりますよ」
と思いもかけずにキャストに立候補してくれたのだった。
もう1人はmixiやアメブロで探し、1回決まりかけた女優さんが逃げてしまったので一瞬途方に暮れたが、もともと一緒に芝居をやる機会をうかがっていた、もっさんと同じオーディションで知り合いになったみやちゃんこと渡辺さんに声をかけてみたところ、快諾をいただいたので、キャストが決まり、僕自身の演出でやるという「持ち込み」の形で上演が実現した。

 実質的な稽古期間が8日間くらいしかなく、キャスト2人なのに稽古の時間帯が合わない時があったり、小道具が揃わなかったりと、決して順調な稽古ではなかったが、2人とも短期決戦の覚悟で臨んでくれた。
稽古場はいつものような公共施設ではなく、ワニズホールと、同じ小屋主さんが持っている別の小さなライブハウスになった。これはなかなか新鮮だった。
また、芝居の終盤にあるディズニーのダンスシーンの振り付けをマーガレットさんにお願いした。時間が限られた中だったが、面白くも素晴らしい振り付けを考えていただいて、ダンス指導もしていただいた。マーガレットさんとは長くお付き合いをさせていただいているが、芝居の現場でご一緒するのは初めてであった。
初演時のシュールな感じのダンスと比べて、愉快ではっちゃけた感じに仕上げていただき、本当に感謝している。

 役者の2人は、どちらも好演だった。
普通、再演ものは初演を超えられないというのが定説だが、今回ばかりは初演を凌駕する出来に仕上がったと言っても過言ではない。
何と言っても、大量の台詞に真っ正面から挑み、シャンパンに見立てた炭酸飲料をガブガブ飲みながらも、ダンスをした後に首まで絞められるという過酷な(?)役をものともせずに演じ切ったもっさんには恐れ入った。アンケートにも「崎本さんの演技に「役の歴史」を感じた」と書かれたものがあったように、お客さんに与えたインパクトはかなりのものがあったようである。まさに「怪演」といってもいい。お客さんだけではなく、同時上演の別の2話に出演していた役者さん達にもインパクトは強かったようだ。
みやちゃんは、そのビジュアルの可愛らしさに注目が集まった。全く知らないお客さんがアンケートに「次の出演作も見たい」と書いた程であった。そのラブリーで柔らかい雰囲気はまさに「癒やし」を感じさせるものであった。
なお、本人は、顔に似合わず、笑顔で人を絞殺するという設定がお気に入りだったようである。

 初演でもそうだったが、この作品では消えものが多く僕がホールの近くで買い出しをすることになった。並んでいるだけで殆ど手をつけられないものも多く、舞台裏では他の作品の出演者がそれを食べていたという情報もある。
また、やはり劇中に登場するケーキは、ちょうどホールの並びにあったケーキ屋さんで予約し、毎回用意してもらっていた。みやちゃんは2回くらいで飽きて、後は僕や別の作品の出演者が食べていた。

 他の2作品に出ていた出演者とも、初対面ながらすぐに打ち解けて、終演後はいつも和気藹々と雑談していた。最終日に少しアルコールが入り、暴走して誰も着いてけなくなったのは、もっさんであった。

 お客様にも、ホールの方にもかなりの好評をいただき、みんなが割といい気持ちで終われた公演である。
病み上がりの僕にとっては、まさにリハビリとしてちょうどいい公演規模と形態(スタッフワークは一切ノータッチでよい、お金のことも考えなくてよい等)だった。今後も気軽に公演を打ちたい時にはまたお世話になりたいと思う。
脚本も気に入ってもらえたようで、ワニズホールの小屋主さんが、
「息吹さん、また書いてくれないかな」
と仰って下さっているという。勿論、また機会があれば2人芝居を書きたい。

 とにかく今回は、もっさんが手を挙げてくれなければ始まらなかったし、みやちゃんが出演に応じてくれなければ公演は実現しなかったわけで、その意味では、役者の2人の心意気は本当に有り難く、感謝したいと思っている。
病気に沈んでいた僕の「復活」の第一弾の舞台であり、また、たまたま「息吹肇‘生誕’25周年記念」の年に上演されたといいうこともあって、小品ではあるが、僕にとっては本当に忘れられない舞台である。