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戀~いとしいとしというこころ~

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戀~いとしいとしというこころ~(必志組)

~観劇日・劇場

2004年8月14日 プロトシアター

~作・演出・出演

  • 作・演出/西瓜すいか
  • 出演/川村友紀絵・小塚早希子・白井みさと・葛西真奈美・秋田若菜・荒木絵里

感想

ハートハートハートハートハート

戀?いとしいとしというこころ?必志組は非常に若く、しかも女性だけの集団で、ちょっと高校の部活動を思わせる。僕は昨年その存在を知ったが、いつもタイミングが合わずに見に行く機会がなかった。そうこうしているうちに、メンバーが一部替わって、現在は「第2期」となっている。今回の公演は、第1期からのメンバーである神田と瀧澤が参加していないという、ややイレギュラーな形の公演だった。
 若い人達の表現は、見ているだけで微笑ましいものに感じられるのだが、それだけではある意味で失礼にあたるので、ややきついことも含めて、率直な感想を書いていこうと思う。
 お話は、やや季節外れとなった(?)七夕にまつわるもの。ナツコ(小塚)は同級生タクミ(川村)に思いを寄せるが、それをうまく伝えることができず、タクミもいまひとつ乗り気ではない様子。七夕の夜ムードに乗じて、ナツコは何とか思いを伝えようとする。一方、天上では1年に一度の彦星(葛西)との再会を前に、織姫(白井)は今ひとつ気が乗らない様子。不審に思ったかささぎ隊隊長のキーク(荒木)が調べると、2人を結びつけている「運命の糸」が途中で切られていた。織姫とキークは、その糸をたどって犯人を突き止めようとする。その犯人であるかささぎ隊副隊長のミオ(秋田)は、2人の追跡から逃れようとして地上に落下し、ナツコとタクミに出会う。2人の事情を知ったミオは、2人を「運命の糸」でぐるぐる巻きにしてしまう。すると、タクミのナツコに対する態度は一変。さらに、ミオを追ってきた織姫・彦星もこの「運命の糸」でそれぞれ別の相手に結びつけられ、4人は大混乱。怒るキークだったが、この悪戯を仕掛けたミオの本当の目的は、そのキークに自分の方を向かせるためだったのだ。
 「七夕」と「糸」を題材にしたお話は結構いろいろある。僕自身も、かつてこのテーマで『七夕伝説』という脚本を書いている。ストーリー自体は非常に素直で、率直に言って新鮮味はない。しかし、役者達の若さと直向きさが印象的で、その力が最後まで客を引っ張る。劇場が狭いため、天上と地上の話というスケールを出すことは難しかったようだが、舞台の使い方にはもう一工夫合あってもよかったかなとも思う。また、ずっとマイムで通してきた「赤い糸」を、終盤のキークの周囲にミオが糸を張り巡らせていくシーンでは、実際に糸を使っていたのも気になった。視覚的にはこの作品中最も美しく、印象的なシーンではあるが、「見える」赤い糸と「見えない」心と心を繋ぐ糸との対比がこの作品では一つのポイントになっている。であれば、そのことを視覚の面でも表現できているともっとよかったし、「赤い糸」を実際に見せるか見せないかも統一しておいた方がよかったかも知れない。
 小塚は殆ど地かと思われる溌剌とした演技。年齢を感じさせないナチュラルな感じがよかった。ナチュラルといえば、相手役の川村も、これまで「男役」オンリーでやってきたというだけあって、年齢・性別共に自分とは違う役を演じる際の「あざとさ」を殆ど感じさせなかったのは凄いと思う。白井はモー娘。のような衣装を着こなして、現代っ子的で活発な織姫像だったが、そのキュートさが光った。葛西はどちらかというとおっとり系の彦星像で白井と好対照だが、もう少し「男」の雰囲気が出せるとよかった。秋田と荒木は、この芝居の‘綺麗な’雰囲気を醸し出す役だったと思うが、それを見事に果たしていた。ただ、荒木はやや線が細く感じた。秋田は、切ない女心をよく表現していた。また、舞台での華は登場人物中一番であった。しかし、これはある意味で全員に言えることだが、まだ演技に固さが見られる。真っ直ぐな表現だけでなく、変化球も含めた演技を研究していって欲しい。
 女性だけで作っているということから、舞台にぴりっとした何かが欠けているという印象も、正直拭えなかった。それが何なのかを言葉で説明するのは難しいが、今後さらに必志組の表現の「核」になるような強い(あるいはしなやかな)何かが舞台から感じられるような、そんなものを模索していくといいかも知れない。
 課題はいろいろとあると思うが、劇中の曲をオリジナルにする(作曲:飯島健一)など、舞台に対しての意欲と気力は十分伝わってくる。冒頭にも書いたが、まだまだ若い集団だ。さらに技術や感性、そして表現力に磨きをかけていけば、よりよい舞台を作っていけるだろう。今後の成長に大いに期待したい。
 余談だが、僕が見に行った日は、音響機材のトラブルで、2カ所あるダンスシーンが飛んでしまった。客には分からないハプニングだったが、終演後、そのことを客に説明して、「作曲者に敬意を表して」(小塚談)改めてその部分のダンスを披露した。「手作り公演」の感じが出て、何とも微笑ましい一コマだった。
 今回のような恋愛の問題一つとっても、ある一定以上の年齢に達すると、前のようには感じられなかったり、考え方が変わってしまうことも出てくる。そんな僕にとって必志組の舞台は、若い頃の自分の感性と久々に出会ったような、懐かしく、そしてどこかほろ苦さを感じる世界であった。